深層モデルを用いた時空間予測
社会インフラや自然現象のように,時間と空間の両方に広がるデータは,多くの分野で日々蓄積されている.しかし,実世界の時空間データはノイズが多く,不確実性や外部要因の影響も大きいため,単純な予測では精度や信頼性が不足しやすい.本研究では,深層学習を用いて,時空間データに内在する相関構造を捉え,将来の状態を高精度に予測することを目指す.メンテナンス計画の高度化,鉄道運行の安全性向上,気象・環境現象の理解などへの貢献が期待できる.
深層学習による気象予測
Ayumu Ueyama, Kazuhiko Kawamoto, Hiroshi Kera, VarteX: Enhancing Weather Forecast through Distributed Variable Representation, ICML 2024, Workshop on Machine Learning for Earth System Modeling, 2024 [arXiv].
本研究は,深層学習を用いた天気予報の精度向上を目的としている.天気予報では,気温,風,湿度など多くの気象変数を同時に扱う必要があるが,従来手法(ClimaX)では計算量や学習効率に課題があった.本研究では,気象変数を効率よく表現・統合する新しい方法VarteXを提案し,限られた計算資源でも高精度な予測を可能にした.実験により,従来手法より少ないモデル規模で予測精度が向上することを示している.

二値メンテナンス介入記録を用いた劣化回復プロセス予測
Katsuya Kosukegawa and Kazuhiko Kawamoto, Long Short-Team Memory for Forecasting Degradation Recovery Process with Binary Maintenance Intervention Records, IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences, Vol. E107.A, No.4, pp. 666-669, 2024 [paper].
土木構造物の状態は,時間とともに劣化し,補修などのメンテナンスによって回復する.本研究では,メンテナンスを「実施したかどうか」という二値の時系列データとして扱い,構造物の状態データと組み合わせて,将来の状態を予測する深層学習モデルを検討している.特に,メンテナンス情報を予測モデルにどのように与えると効果的かを比較し,より精度の高い予測につながる方法を明らかにした.

外因的要因を用いた軌道狂いの時空間予測
Katsuya Kosukegawa, Yasukuni Mori, Hiroki Suyari, Kazuhiko Kawamoto, Spatiotemporal forecasting of vertical track alignment with exogenous factors, Scientific Reports 13, 2354, 2023 [paper][GitHub].
鉄道運行の安全を確保するためには,線路の状態変化を継続的に監視し,将来の変化を予測することが重要である.本研究では,線路の状態が場所ごとに関連して変化する点や,保守履歴や周辺環境といった外部要因の影響に着目し,それらを同時に扱える予測手法を検討している.深層学習を用いて空間的な関係と外因的要因を組み合わせることで,軌道狂いの一種である垂直整合性をより高精度に予測できることを示した.本研究は,JR東海との共同研究の成果である.

時空間予測のための2D畳み込みニューラルマルコフモデル
Calvin Janitra Halim and Kazuhiko Kawamoto, 2D Convolutional Neural Markov Models for Spatiotemporal Sequence Forecasting, Sensors 20, no. 15: 4195, 2020 [paper].
近年,深層学習を用いて,時間と空間の両方に広がるデータを予測する研究が進んでいる.しかし,実世界のデータはノイズやばらつきが大きく,安定した予測が難しいという課題がある.本研究では,不確実性を考慮できる確率モデルと画像処理で用いられる畳み込みニューラルネットワークを組み合わせ,空間構造を保ったまま将来を予測する手法を提案した.その結果,ばらつきの大きいデータや長期予測においても,従来手法より安定した性能が得られることを示した.

